先日、同じリーンシックスシグマの同志、マイク根上さんと話をしていて面白いことを伺いました。「なぜ日本ではリーンシックスシグマがなかなか広まらないかのか」という、いつもの我々の話題に対して、根上さんは「どうやら日本ではISO 9001認定の次のステップとして、リーンシックスシグマよる品質向上がようやく注目され始めたようだ」と、言うのです。
ISOが2011年にシックスシグマを公式に採用したことは僕も知っていました(ISO 13053やISO 18404) 。しかしISOのシックスシグマはあくまでも推奨規格に過ぎません。ISO 9001 やISO 14001のように 企業を監査し認定を与えるものではないので、企業はシックスシグマを採用することに一体どのような動機を持つのでしょうか。
ISOがシックスシグマを正式採用した背景
僕はISOに関わっているわけではないので、なぜISOがシックスシグマを正式採用したのか、その背景については直接知りません。しかし人から聞いた情報などによれば、それまで各認定機関や各企業がシックスシグマに求めていた知識や技量がバラバラだったため、シックスシグマとしてある程度の基準を設ける必要が生じ、そこでISOがシックスシグマの最低推奨基準を定めるに至ったそうです。
今でもよく見られることですが、例えば同じブラックベルトのトレーニングでも、企業や認定機関によって、その内容やトレーニング期間、プロジェクトに求められる基準などに随分と差があります。もちろんトレーニング費用もまったく違います。実際にそれらの違いはブラックベルトの質の違いとして現れています。
ベルトの認定基準など、少しでも違いを減らすために、恐らくISOはシックスシグマの最低基準を定める必要があったのではないでしょうか。つまり品質を良くするはずのシックスシグマ自身に品質のバラツキがあったため、品質を高める(バラツキを減らす)目的で定められたのがISO 13053やISO 18404ではないかと思います。
ISO 13053とISO 18404の内容
ISOが定めるシックスシグマは3部構成になっています。シックスシグマのツール、トレーニング、組織や役割には何が(Whats)最低限必要なのかということを定義しており、どのようにして(Hows)導入するか、どのように(Hows)ツール類を使うかという方法についてはほとんど触れていません。
規格のタイトルには「シックスシグマ」とありますが、実際にはリーンの内容も含んでおり、タイトルは「リーン&シックスシグマ」とした方が正確かもしれません。
以下は、ISO 23053 と ISO 18404 の内容です。
ISO 13053-1 シックスシグマによる定量的なプロセス改善手法 – DMAIC方法論:
27ページ(32ページ付属ページを含む)
- プロジェクトの構造(DMAIC)
- 数量測定の項目
- シックスシグマの組織と役割
- 各役割に必要な適性
- シックスシグマのトレーニングに求められる最低基準
- プロジェクトの優先順位と選択
- DMAIC方法論の概要
- シックスシグマで使われる典型的なツール類
- プロジェクト管理
- シックスシグマの組織構成
ISO 13053-2 シックスシグマによる定量的なプロセス改善手法 – ツール及び技法:
49ページ
- 定義フェーズの目的、手順、および典型的なツール類
- 測定フェーズの目的、手順、および典型的なツール類
- 分析フェーズの目的、手順、および典型的なツール類
- 改善フェーズの目的、手順、および典型的なツール類
- 定着フェーズの目的、手順、および典型的なツール類
- 各ツールの概要、役割、手順等
ISO 18404-2015 シックスシグマによる定量的なプロセス改善手法 – シックスシグマおよびリーンの導入時に個人や組織に求められる適性: 35ページ
- シックスシグマ導入に求められる教育、トレーニング、経験等
- リーン導入に求められる教育、トレーニング、経験等
- リーンシックスシグマに求められる教育、トレーニング、経験等
- リーンシックスシグマ導入する組織や個人の妥当性
- リーンシックスシグマ導入する組織や個人に求められる適性
リーン、およびシックスシグマの解説本を手に取ったことがある方なら、本の厚みや内容の深さに驚いたことがあるかもしれません。それをたった数十ページの規格でまとめるのは不可能です。そのためISO 13053やISO 18404はチェックリストのような構成になっています。
リーン、およびシックスシグマを実際に導入するためには、やはり専門機関でトレーニングを受ける必要がありそうです。