DFSS グリーンベルトのトレーニング、第一日目が無事に終わりました。今回も DFSS 導入部分は、リーンシックスシグマの歴史や DFSS への派生についての議論から始めました。一通り歴史的背景やリーン、シックスシグマ、そして DFSS の違いについて理解した後は、いつものように皆でデミング博士のビーズ実験のビデオを観ました。やはり品質管理の父であるデミング博士に触れないわけにはいかないし、もしこの時代にリーンシックスシグマや DFSS を使っていたらどう変わっていたかなど、皆で議論するにはうってつけの教材だからです。
ビデオの中でデミング博士は面白い実験をしています。デミング博士は 六人の部下を従えるマネジャー役に扮し、部下六人に作業のやり方をマニュアル通りに説明します。作業はとても簡単で、白いビーズ(良品)に赤いビーズ(不良品)が一定の割合(20%)で混ざった箱の中からツール(へら)を使って50個のビーズを掬い上げるというものです。そして決められた通りにツールを 45度に保ちながら、白いビーズ(良品)だけを掬い上げることが、部下に与えられた課題です。
六人の部下はその作業を繰り返します。そして掬い上げてしまった赤いビーズ(不良品)の数を記録していきます。全員が四回作業を繰り返したところで、デミング博士が扮するマネージャーはその結果を見て、成績の悪かった三人をクビ(解雇)にします。
解雇されず残った優秀(?)な三人は作業を繰り返しますが、赤いビーズ(不良品)の割合は全体的に見れば全く変わりません。そしてデミング博士はこれがアメリカで行われている品質管理のやり方だというのです。
このビーズ実験のビデオは恐らく 1980 年台後半のものです。ビル・スミス氏とマイケル・ハリー氏がモトローラでシックスシグマを始めたのがちょうど 1980 年台後半のことですから、当時のアメリカ企業の多くがまだリーンシックスシグマを使っておらず、このような品質管理を行っていたに違いありません。つまり、皆にリーンシックスシグマが使われる以前の状況にタイムスリップしてもらったわけです。
ビデオを観た後、リーンシックスシグマや DFSS を使えばどのように品質管理を変えられるのか、皆に考えてもらいました。そして以下の様なアイデアが出てきました。
- 不良品が最初から混ざっていることがそもそも問題である。設計に問題があるのなら DFSS を使って不良品を減らす
- 部品の生産などに問題があるのならシックスシグマを使って、問題を解決する
- マニュアル化された手順も問題。リーンを使って継続的に作業をカイゼンする
- リーンを使って、ツールもカイゼンできる
- 作業が遅い。リーンを使えば作業の効率化も図れる
- 統計的アプローチを使えば不良品の確率が分かるので、部下に責任を押し付ける必要はない
1980 年台後半と言えば日本製品の品質は世界一で、アメリカが高品質の日本製品に対して脅威を感じていた時です。その脅威に打ち勝つために、アメリカは日本に学び、シックスシグマやリーンなど、新しい品質管理技術を取り入れ始めました。
このビデオは品質管理の父であるデミング博士の時代から、リーンシックスシグマの時代に移り変わる貴重な時に撮られたものです。そのビデオを観ながら(タイムスリップしながら)リーンシックスシグマについて議論することは、なんだか不思議な感覚になります。
デミング博士のビーズ実験について、ネットサーフィンをしておりました。
ビーズ実験を1980 年台後半と書かれておりますが、西堀栄三郎先生の「品質管理心得帖」に、1950年のデミング博士の最初の講義の際に、デミング博士に頼まれてビーズを作った。とありますので、実験自体は第2次大戦以前からされていたものと思います。
いずれにしても、デミング博士が好きな実験のようですね。
通りすがりさん、コメントとご指摘ありがとうございました。「ビーズ実験を1980年台後半」とあったところを、ご指摘に従い「ビーズ実験のビデオが1980年代後半のもの」と変更しました。これからも何か気付いたことがございましたらご教授下さい。