先日、リーンシックシグマ・ブラックベルトのマイク根上さんと電話で話をしました。
その際、根上さんに全体最適化について尋ねられ、僕は設計最適化のプロジェクトのことだと思い、DFSS等で行う最適化について説明しました。
例えばDFSSで行う設計最適化のプロジェクトの場合、
- まずシステムに対する入出力パラメータを決定し
- スクリーニングDOEを行い、出力パラメータの影響を与える入力パラメータを見つけ出し
- 選んだ入力パラメータを使って、出力パラメータを同定する数値モデルを作り、
- 最後に数値モデルを使ってモンテカルロ・シミュレーションを行い
- 目的の値になるように、入力パラメータを最適化する
- その際、部分最適値か全体最適値を判断する
という手順で、設計パラメータの最適化を図ります。
ところが根上さんは電話先で困っていました。というのも彼の質問は設計プロジェクトの最適化のことではなく、経営改善等の全体最適化についてだったからです。
しかし設計等の最適化プロジェクトも、経営改善等の最適化プロジェクトも基本的な流れは変わりません。設計の最適化の場合はモデルを作ってそこに数値を当てはめ、シミュレーションを行い、最適値を見つけるだけです。経営改善のプロジェクトも同じで、その場合、総資産経常利益率の最大化を図ります。
設計プロジェクトの場合、まず数値モデルを決めなくてはなりません。そのためにDOEなどを行います。しかし経営改善のプロジェクトの最適化の場合は、すでに経営モデルが決まっているため、DOEなどを行って数値モデルを作る必要なありません。経営指標からデータを拾ってきて、経営モデルに当てはめるだけです。つまり各経営指標の値を求め、その数値を大きくしたり、小さくしたりすることで総資産経常利益率(ROA)の最大化を図ります。
経営モデルは損益計算書を使って総資産利益率(ROA)を分解して求められます。
例えば、総資産利益率(ROA)は売上高純利益率と総資産回転率に分解でき、売上高純利益率は純利益と売上高に分解できます。そのように分解していって、最終的な経営指標(市場規模、市場シャア、販売単価等)を求め、その最終的な経営指標の増加または低減をプロジェクトを通して行います。
全体最適化、つまり総資産利益率の最大化を図るためには、市場規模の拡大や市場シャアの拡大を図りつつ、売上原価や変動費、固定費等の削減を図ることになります。
一方、部分最適化のために研究開発費等を削減したことで新製品の開発ができず、市場規模や市場シェアが落ちてしまったら、全体の総資産利益率(ROA)も落ちてしまいます。あくまでも全体最適化(総資産利益率の最大化)を図るために、各要素の最適化を図る必要があります。
具体的には総資産利益率(ROA)の最大化のためには、DFSSやValue Analysisのプロジェクトを使って、
- 市場規模の拡大
- 市場シェアの拡大
- 販売単価の増加
- 研究開発費の最適化
を行い、シックスシグマやValue Engineeringプロジェクトを使って
- 売上原価の削減
- 変動費の削減
- 固定費の削減(人件費は除く)
を行い、またはリーン・プロジェクトを使って
- 棚卸資産の削減
- 売掛金の削減
- 固定資産の削減
- その他流動資産の削減
を行います。そしてそれらの改善が部分最適化にならないためにも、ブラックベルトやマスターブラックベルトがそれぞれの改善プロジェクトを調整します。
また、これら問題解決(最適化)のフレームワーク(プロジェクト)を組み合わせて使うことで、全体最適化、つまり総資産利益率(ROA)の向上ができます。
最後にそれぞれの経営指標の予想されるバラツキとターゲット値をともに、モンテカルロシミュレーションを行えば、総資産利益率(ROA)の平均値とバラツキを求めることができます。例えば上記の場合、平均的な総資産利益率(ROA)は29.1%でしたが、バラつきが大きく標準偏差は171%となりました。
つまりこれら問題解決(最適化)のフレームワーク(プロジェクト)を使って、総資産利益率(ROA)の最大化やバラツキの減少を図ることが全体最適化になります。
根上さんにことようなことを話しました。そうしたらもっとわかりやすくYouTubeビデオを作ってくれました。
いつも根上さん、有難うございます。