エッセイ: プロジェクト指向

長くリーンシックスシグマの仕事をしていて何時も感じることは、「小さなプロジェクトの成功を一つ一つ積み重ねていくことが、企業にとっても、社員にとっても最良の方法だ」ということです。達成困難と思われる大きなプロジェクトでも、小さなプロジェクトに分けて、小さなプロジェクトの成功を一つ一つ積み重ねていけば、大きなプロジェクトの成功につながります。当たり前のことのようですが、実はそれほど簡単ではありません。

いつも「忙しい、忙しい」と言っている人にその理由を聞いてみたところ、「多くのプロジェクトを抱えており、毎日仕事に追われている」と言いながら 、ToDo リストを見せてくれました。彼はプロジェクトマネジャーではなかったので、どうしてそんなにたくさんのプロジェクトを抱えているのか不審に思った僕は、さらに深く理由を聞いてみました。するとどうやら、多く抱えているのはプロジェクトではなく、どうもタスクのようでした。

忙しいことは結構なことですが、毎日タスクに振り回されていては、何のために仕事をしているのか、会社にどのような貢献をしているのか、分からなくなってしまいます。これは本人にとっても、会社にとっても不幸なことかもしれません。

では、プロジェクトとタスクは、一体何が違うのでしょうか。僕が思うところでは、

プロジェクト:

  • まず、始まりがあり、終わりがあります
  • そして、プロジェクトを計画通りに遂行するためのスケジュールがあります
  • また、プロジェクトの成功を図る尺度とその達成目標があります
  • 一方、人材や資金などの制約があります

タスク:

  • まず、プロジェクトを遂行させるために構成された個々のステップが、タスクである
  • そして、個々のステップをスケジュール管理したものが、その日その日のタスク
    (デイリータスクは日々のルーチンワーク)
  • また、これからやらなければならないタスクを一覧にしたものが、ToDo リスト(プロジェクトで計画されたものとルーチンワークを含む)

そしてプロジェクトの成功率を上げ、そして継続的に成功し続けるには、しっかりと体系化されたプロジェクト管理手法に用いてタスクを設定し、そのスケジュールを管理する必要があります。

体系化されたプロジェクト管理手法として最も代表的なものが、PMI(project management institute)が定める PMBOK(Project Management Book of Knowledge)でしょう。そこではプロジェクト管理には何が必要なのか(Whats)とその流れと構成(フレームワーク)が定義されています。しかし、どのようにそれを実行するか(Hows)については定義していません。Hows については個々の産業や企業によって大きく違うため、定義するのが難しいのかもしれません。

リーンシックスシグマも PMBOK と同様、体系化されたプロジェクト管理手法です。しかし PMBOK と違うところは、Hows についても深く追及されている点です。例えばプロジェクト遂行に必要なチーム編成、ツール類、そしてツールの使い方などを、プロジェクトの段階に応じて周到に用意しています。恐らく Whats の部分よりも、そのような Hows の部分が大きいのがリーンシックスシグマの特徴かもしれません。

つまり PMBOKは、「プロジェクトを成功させるためには、こういう物が必要ですよ」と言っているのに対し、リーンシックスシグマは、「プロジェクトを成功させるためには、こうすれば良いですよ」と言っているようなものです。両者に共通していることは、プロジェクト遂行のための考え方(フレームワーク)が定義されている、ということです。

プロジェクト指向

僕が見る限り、タスク指向で仕事をしている人には、プロジェクトの成功率を高めるためのフレームワークが見受けられません。品質向上や生産性向上など、具体的な数値目標も曖昧です。ただ日々のタスクをこなしているだけのように見えます。

一方、プロジェクト指向の人は、大きな仕事でも小さなプロジェクトに分け、PMBOK やリーンシックスシグマといったフレームワークの中で仕事を行います。制約を認識し、明確な目標のために努力しているようにも見えます。

僕は、与えられた仕事は大きいものでも小さいものでも、すべてプロジェクトに置き換えることができると思っています。プロジェクトに応じて最適なフレームワークを選択することで、プロジェクトの成功率を格段に高められると信じています。