エッセイ: リーンシックスシグマの究極の目的

今仕事で、いくつものリーンシックスシグマに関するプロジェクトを管理しています。大きいものから小さいもの、製品開発からプロセス改善まで様々です。個々のプロジェクトはそれぞれ面白みもあり楽しいのですが、一方で「本当にこのプロジェクトは会社にとって意味があるのか」などと、考えることもあります。

そこで先日、QFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)を使い、会社の長期ビジョンと方針から始め、今年度の戦略的ゴール、各部署の長期・短期プランと落としていき、最終的に個々のリーンシックスシグマ・プロジェクトまで関連付けてみました。

QFD を使って思ったことは、個々のリーンシックスシグマ・プロジェクトの重要度(優先順位)はそれぞ違うけれども、一つとして会社のビジョンや方針に反するものはないということでした。なんらかの形で個々のリーンシックスシグマ・プロジェクトが、会社のビジョンや戦略的ゴールの実現に貢献しているのが分かり、ちょっと安心しました。

そんな時、ふと目に留まった記事がコレです。この記事を紹介しつつ、自分の考えも追加していきたいと思います。

リーンシックスシグマの目的って何だ?

リーンシックスシグマについて語られるときに真っ先に出てくるのが「リーンシックスシグマの目的って何だ」という質問ではないでしょうか。模範的な答えは、「ムダを削減してプロセスの効率を上げたり、バラツキを減らして製品やサービスの品質を高めること」と言えるかもしれませんが、これは喩えれば、「金槌の目的は、釘を打つこと。釘はここに打つべし」と言っているようなものです。では、なぜ金槌を使って釘を打つのでしょうか。元の質問に戻れば、リーンシックスシグマを使う本来の目的は何なのでしょうか。

同じようなことは、ツール類についても言えます。リーンシックスシグマが多くのツールを使うことは良く知られていますが、「どうして、なぜ、ツールが使われるのか」という、本来の目的が語られることは、以外に少ないものです。

リーンシックスシグマの本来の目的

金槌を使って釘を打つことの本来の目的は「家を建てること」または「家具を作ること」です。リーンシックスシグマの本来の目的は、企業経営を成功させること、これに尽きます。企業の経営が財務によって評価される以上、リーンシックスシグマもバランスシートを向上させたり、経営の効率を高めることに寄与しなくてはなりません。

もしリーンシックスシグマがプロセスのムダを削減することができれば、企業経営の効率が高まり(プロセス、人、機械など)、財務の結果が良くするはずです。

また、もしリーンシックスシグマがバラツキを減らして製品やサービスの品質を向上させることができれば、売上が高まり、同時に不良品や補償金が減り、ひいては財務の結果が良くなるはずです。

リーンシックスシグマの個々のプロジェクトも財務によって評価できれば、それが理想です。

リーンシックスシグマのプロジェクトの選択

全てのリーンシックスシグマのプロジェクトは、企業の財務を向上させるものであるべきです。もしあるプロジェクトが企業経営に何ら貢献しないとすれば、そのプロジェクトは失敗だと言えるでしょう。プロジェクトを始める前に、そのプロジェクトを企業経営と財務に照らし合わせて評価すべきです。そしてもし貢献度が低かったり、反対にコストの方が高かったりする場合は、そのプロジェクトは却下すべきです。

しかし実際には、グリーンベルトやブラックベルトの認定にためだけのプロジェクトや、単にツールを興味半分で使ってみるプロジェクトなど様々あります。このようなプロジェクトは時間とお金の浪費かもしれません。

僕の周りでもそのような悪例はたくさんあります。よくあるのが、グリーンベルトやブラックベルトの認定にために、過去の仕事を使う場合です。つまり、すでに終わった仕事を題材にして、リーンシックスシグマのプロジェクトとしてやり直す場合です。ツール類を改めて使って、プレゼンテーション用のスライドを作ったりするのです。本人にとっては、リーンシックスシグマの認定が得られるので良いかもしれませんが、企業の財務には何ら貢献していません。

一方で、個々のプロジェクトをお金に換算するのは難しいものです。現にある製品やサービスの改善は、現にある製品やサービスの金額を基に改善結果を評価できるので、比較的簡単なのですが、新製品や新規のサービスのためのプロジェクトは評価の基準がないため、金額に換算するのが大変です。換算したとしても、精度に疑問が残ります。

新規の製品やサービスを対象にしたプロジェクトを、企業に貢献する金額で評価すること、これが今の課題の一つとなっています。