エッセイ: リーンシックスシグマ(DMAIC)のアプローチ

最近、品質管理部門と一緒に仕事をしています。皆とても優秀な人達で、博士号を持っていたり、少なくとも品質管理分野での修士号を持っている人達です。そんな優秀な彼らと一緒に、顧客から戻ってくる製品の不具合について調べています。正確に言えば、製品不良として顧客から返品されたものの、社内で確認しても不良が見つからない、といった問題です。

品質管理の人達ですので、返品された製品を事細かに調べます。与えられた業務の範囲で全力を尽くしているのが伝わってくるのですが、それでも問題が見つからず、時間ばかりが過ぎて行きます。そこで詳しく彼らから話しを聞き、不具合として報告されたデータを見てみると、そもそもそのデータ自身の信憑性に問題があるように僕には思えました。

信頼性の低いデータを基に調査を行って、時間と労力、お金を費やすよりも、なぜ信頼性の低いデータが作られるのか、まずその理由と原因を解明して、データ取得のプロセスを改善する方が何よりも優先されるべきだと、僕は考えます。プロセスを改善し、信頼性の高いデータが得られてから初めて不具合の調査を行った方が、満足できる結果が得られるのではないかと思うからです。

そこで DMAIC のフレームワークを使ったプロセス改善のプロジェクトを提案しました。それぞれのフェーズでの課題と、使用するリーンシックスシグマのツールは以下の通りです。

1.プロジェクトの定義(Define Opportunity)

• プロジェクトの範囲(スコープ)を明確化する(SIPOC, Charter, Business Case)
• プロジェクトの成功要因(Y-Metrics, CTQs)を明確化する(SIPOC, AHP, QFD)
• プロジェクトの利害関係者は誰か把握する(RASCI Matrix)

2.現在のプロセスの評価(Measure Performance)

• 現在のプロセスを把握する(Process Map, VSM)
• 現在のプロセスの問題点を洗い出す(C&E Matrix and Diagram)
• 問題点の危険度を評価する(P-Diagram and Preliminary FMEA)
• データ収集プランを検討する(Data Collection Plan)

3.問題の分析と新しいプロセスの提案(Analyze Opportunity)

• 問題の原因を分析する(VA/NBA Analysis, Cycle Time Analysis, Waste Analysis)
• (現在のプロセスをモデル化しシミュレーションする)(SimEvents)
• 新しいプロセスのコンセプトをいくつか設計する(Process Map, VSM)
• もっとも適した新しいプロセスを選択する(P-Diagram and Concept FMEA)

4.新しいプロセスの実施(Improve Performance)

• アクション項目を明確化する(Gap Analysis)
• プロセスのリスクを評価する(P-Diagram and Process FMEA)
• コスト計算を行う(Cost vs. Benefit Analysis, Simulation)
• 実施プランを決定する(Implementation Plan, Change Management Plan)
• 新しいプロセスの導入を実施する

5.新しいプロセスの評価(Control Performance)

• 新しいプロセスを評価する(Data Collection and Monitoring, Statistics Analysis)
• 新しいプロセスの安定性を評価する(Process Analysis, Process Control Plan)
• ドキュメンテーション(Documentation and handoff, Project closure)

このプロジェクトは、不具合製品を客先または販売業者から引取るプロセスを改善し、信頼性の高いデータを取得することを唯一の目的としています。決して複雑なプロジェクトではありませんが、利害関係者として多数の部署が関わってくるため、皆の同意が取れるかどうかが、大きな問題です。

一応、上記の内容をまとめて、プロジェクトの提案をしてみましたが、まだ正式に発足するかは決まってません。