エッセイ: リーンシックスシグマは大企業のためのものなのか

時々、「リーンシックスシグマは大企業のためのものなのか」という質問を頂きます。答えはもちろん否です。リーンシックスシグマはもちろん中小企業でもその力を発揮します。(ここでは問題解決のフレームワークを代表してリーンシックスシグマについて書いてみます)

確かにリーンシックスシグマはモトローラで生まれ、GEはそれを全面的に採用し成功した。今では米国を始めとする海外の多くの大企業はリーンシックスシグマを使っていますが、十数年前と比べて大きく違うことは、その裾野が格段に広くなったことです。今では米国では企業の規模を問わず、また業種を問わず、リーンシックスシグマが広く普及しています。

なぜリーンシックスシグマは企業の規模や業種を問わないのでしょうか。

第一の理由はやはり、リーンシックスシグマは「問題解決のためのフレームワーク」であり、企業の規模や業種を特定したものではない、ということです。企業規模や業種に関わらず、問題や課題を解決するためにリーンシックスシグマというフレームワークを使うことができます。

第二の理由は、リーンシックスシグマがプロジェクト単位で業務を進めるためでしょう。

リーンシックスシグマは、解決したい問題(業務)はすべてプロジェクトとして捕らえます。大企業には大きなプロジェクトが、そして中小企業にも会社規模に見合ったプロジェクトが存在します。

大企業のプロジェクトは規模も大きく複雑かもしれませんが、それを小さなサブ・プロジェクトに分割していきます。分割した個々のプロジェクトは、中小企業のプロジェクトと恐らく似たようなものになるでしょう。つまり極端な言い方をすれば、大企業と中小企業の違いは、プロジェクトの数だけかもしれません。

大企業も中小企業も、リーンシックスシグマを使って個々のプロジェクトが抱える問題や課題を解決していく、それだけのことです。集積した個々のプロジェクトの成功が企業の成功だとすれば、リーンシックスシグマがは企業規模を問うことは決してありません。

もし企業規模を問うことがあるとすれば、初めてリーンシックスシグマを導入する時かもしれません。

リーンシックスシグマの導入には人的投資と技術投資、つまり教育やトレーニング、ソフトウェアなどが欠かせないので、時間と費用、人材が必要になってきます。企業がそれを捻出できるかどうかが最大の課題です。大企業はそれができるかもしれませんが、余裕の少ない中小企業は人的投資と技術投資に躊躇せざるを得ない場合があるでしょう。

座して死を待つか、打って勝負に出るか、経営者やリーダーの決断次第です。

リーンシックスシグマの企業規模による違い

リーンシックスシグマ導入すれば100%企業が成長するとは決して言えません。どのような企業でも成長戦略にはリスクが伴い、リーンシックスシグマはそのリスクを軽減するだけで、完全に無くすことはできないからです。しかしリーンシックスシグマを導入して成長した企業はたくさんあるのも事実です。リスクを理解し、投資を行って次の成長に繋げるかどうかは、経営者の判断に掛かってきます。

幸いなことに、すでに米国を中心にしてリーンシックスシグマの実績が十分に培われています。成功事例や失敗事例の研究はもちろんのこと、今や各種の書籍やツール類、テンプレートなど豊富に出揃っています。またインターネットもリーンシックスシグマに関する情報の宝庫となりました。ほんの十数年前と比べて、リーンシックスシグマへの敷居は十分に低くなり、導入時のリスクは確実に下がりました。費用に関しても格段に安くなったと言えるでしょう。これは中小企業にとっては大変喜ばしいことです。

今やリーンシックスシグマは大企業のものだけではありません。中小企業が積極的に導入し、成功を収めるための一つの道具となっています。