エッセイ: リーン・ブロンズ認定

資格認定は本当に良い商売なのだと思います。アメリカにも実に多くの資格認定がありますが、リーンもその一つとなっています。リーンシックスシグマの場合、認定は主にグリーンベルト、ブラックベルト、マスターブラックベルトの 3 段階ですが、リーンの場合は主に、ブロンズ、シルバー、ゴールドの 3 段階が設置されているようです。僕は今回、試しにリーン・ブロンズの認定資格を受けてみました。

1. 動機

最近、会社の業務プロセス改善の仕事を中心に行っていたため、リーン手法を使う機会が多くありました。そのせいもあり、最近はトヨタ関連の本を中心に、リーンに関する本を多く、しかもまとめて読んでいたので、それならば一層の事、リーンの資格に結び付けておこうと思ったのがきっかけです。

2.資格認定業者(プロバイダー)

僕は ASQ (American Society for Quality)の会員なので、まず ASQ がリーンの認定をしているかどうか調べてみました。ASQ のサイトを見てみると、一応リーンの認定があるようでした。”一応”と書いたのは、実は ASQ 自身では認定を行っておらず、代わりに ASQ の関連組織である SME(Society of Manufacturing Engineers)が行っており、ASQ はその斡旋を行っているだけだったからです。しかし ASQ の会員には SME の資格認定料金の割引があったので、他に調べもせずに SME のリーン・ブロンズを受けてみることにしました。

ASQ の会員であっても SME で新たにアカウントを設定しなくてはならなかったこと、SME に料金を納めたこと、SME のルールで試験を行ったこと、SME のルールでプロジェクト実績レポート(プロファイル)を提出したこともあり、ASQ が斡旋しているとは言え、これは SME の認定試験だと言えます。

Lean Certification

3.料金

もし ASQ または SME の会員でなければ、オンライン試験の料金は 499 ドルですが、僕の場合は ASQ の会員であったので、339 ドルでした。料金はオンライン試験が一番安かったのでそれにしました。他にもペーパー試験で、英語、フランス語、スペイン語の選択肢がありましたが、それぞれ 30 ドルほどオンライン試験(英語)より高く設定されていました。

4.試験勉強

SME は参考書として以下の 4 冊の本を指定していました。

  • Gemba Kaizen: A commonsense Approach to a Continuous Improvement Strategy
  • Lean Production Simplified: Plain-Language Guide to the World’s Most Powerful Production System
  • Lean Thinking: Banish Waste and Create Wealth in Your Corporation
  • Learning to See: Value Stream Mapping to Create Value and Eliminate MUDA

また SME は Lean Certification Body of Knowledge なるものを定義してしました。とりあえず僕は、この 4 冊の本を買って、読んで、そして内容が Body of Knowledge に沿っていることを確認することで、試験勉強としました。

試験勉強に限らず、この 4 冊の本は読んでいて結構面白かったし、仕事の参考にもなりました。

5.オンライン試験

僕は PMI(Project Management Institute)が認定する PMP(Project Management Professional)の試験もオンラインで受けたのですが、この場合は近所のオンライン試験場に行って、試験監督者の下、オンライン試験場のコンピュータで試験を受けるだけだったので簡単でした。しかし SME のオンライン試験は PMI とはずいぶんと異なり、かなり面倒臭いものでした。

SME のオンライン試験は、まず試験監督者を事前に任命するところから始まりました。僕は会社の同僚に、僕の試験監督者になってもらうように頼みました。同僚は SME にメールを送り、自身が試験監督者であることを連絡し、必要な情報を提供し、SME から試験監督者として認めてもらう必要がありました。そして同僚は SME からオンライン試験の注意事項や試験監督方法などの細かい指示書を受け取り、指示書に同意することが求められました。

試験日と試験時間は、事前に自分で設定することができました。僕は試験日と試験時間に合わせて会社の会議室を予約しておいたので、当日はその時間に試験監督者である同僚がそこに来てくれました。僕は試験時間の前に自分のラップトップ・コンピュータで SME のサイトにアクセスして準備を整え、その後は同僚が SME の指示に従って僕のオンライン試験を開始してくれました。

試験は 3 時間、 165 問の 4 択試験でした。試験中は教科書持ち込みが可能でしたが、およそ 1 分間で 1 問説かなくてはならなかったので、教科書を調べている時間はありませんでした。それでも何とかコーヒーを飲みながら 3 時間試験問題と格闘し、無事に試験を終了することができました。

試験が終わると、画面上に試験結果が即座に表示されました。僕は 87% の正解率で無事に合格しました。正解率 75% 以上で合格のようです。

僕の試験中、何度も席を外した同僚でしたが、試験終了前には会議室に戻ってきてくれ、僕の試験合格を祝ってくれました。

実はここまで比較的簡単でした。ここからが実に結構面倒臭かったのです。

6.トレーニングと教育履歴

SME は試験に合格するだけではリーン・ブロンズの認定をしてくれません。さらにトレーニングと教育履歴、それから実際のプロジェクトの実績が必要になります。

トレーニングと教育履歴は 80 ポイントが必要でした。本を 1 冊読んで 4 ポイント、トレーニングやコーチなどを1 時間行って 1 ポイントなどが報告できるので、なんとか色々と掻き集めて 80 ポイント以上 SME に報告することができました。

2015 年夏から要求内容が変わって、必要なポイントは 60 に下がったようですが、僕はそれ以前から準備していたので、80 ポイントで報告しました。

7.プロジェクト実績レポート(ポートフォリオ)

リーン・ブロンズ認定には、さらに 5つのプロジェクト実績が要求されます。それぞれのプロジェクトの内容を、Plan、Do、Check、Act に従って詳細に報告する必要があります。

僕はこれまでに行った 5 つのリーン関連のプロジェクトや改善活動をレポートにまとめ報告しました。このレポートを作る作業が結構面倒臭かったし、時間がかかりました。

これも 2015 年夏から要求内容が変わって、3つのプロジェクトで良くなったようです。僕はそれ以前から準備していたので、5つのレポート実績を報告しました。

8.プロジェクトの評価

プロジェクト実績レポート(ポートフォリオ)を SME に提出してから待つこと 2 か月、やっとプロジェクトの評価が返ってきました。SME はこの 2 か月の間、まず外部の評価者を選択し、その評価者に僕のレポートを転送し、その評価者が評価を終えるまで待っていたようです。

それぞれのプロジェクトは 15 満点で、すべてのプロジェクトが 12 点以上だと合格です。一つでも 12 点以下のプロジェクトがあると不合格となります。またプロジェクトの反省文を書くところがあり、そこは25 点満点中、20 点以上で合格です。

5 つのプロジェクトとその反省文を含め、プロジェクト実績レポートはまるで小論文のようで、僕の場合、全ページ数は 16 ページにもなりました。

プロジェクト実績の評価結果はまずまずで、晴れてリーン・ブロンズ認定が授けられました。

感想

リーン・ブロンズを受けてみようと思ってから、試験勉強をし、試験を受け、ポイントを計上し、プロジェクト実績を報告するまで約 8 か月、そしてプロジェクト実績評価を待つこと 2 か月、合計 10 か月程度掛かってしまいました。料金は手ごろですが、正直なところ時間はかかるし、レポートを書くのは面倒だし、疲れました。でもついでなので、シルバー認定も目指してみようと思っています。