子供へのクリスマスプレゼントとして、卓球台を買いました。北国のここは冬が長く、極寒期ともなると、外での活動が制限されるため、少しでも子供が運動ができるようにと思っての購入です。べつに本格的にゲームをするわけでもなく、ただ楽しめればよいと思い、中国製で組み立て式の安いものを約 1 万円ほどで購入しました。
僕の家は、殆どすべて IKEA の組立て式の家具を使っているので、組み立てることに対しては、まったく抵抗はありませんでした。しかしこの卓球台の品質については、リーンシックスシグマを知るものとしては、許せないものがありました。もし少しでもリーンシックスシグマを知っていれば、こういう製品ははずかしくて作れないだろうとさえ思えました。
何が許せなかったのか。まず、ダンボールのパッケージが、重量の割にはかなり薄く、これで内容物を守ることができるのか疑問でした。そのため二人がかりでパッケージを運んだ時は、パッケージの角をつぶさないように、細心の注意を払う必要がありました。
次に許せなかったのが、ネジの下穴が開いていなかったことです。テーブルの板を組み合わせたり、付属品をつけたりするために、全部で 184 本のネジ止めが必要だったのですが、板に下穴がまったく開いていませんでした。あったのは、ネジ止め箇所を示す目印だけでした。しかもこの目印が金具の穴位置とずれていて、まったく当てにはなりませんでした。それだけでも許せないのですが、さらに付属の工具(工具というよりも、金属片のようなドライバー)が人を馬鹿にしていて、下穴がない木のテーブルに、とてもネジをねじ込める代物ではありませんでした。
幸い僕は電動工具類をかなりもっていたので対応はできましたが、広告を真に受けて、そのまま組み立てられる卓球台と思って買った人は泣く羽目になったと思います。
これだけではありませんでした。テーブルの脚となる金属の部品は長さが合っておらず、テーブルが水平になりませんでしたし、テーブルとの接合部は強度がたらず、部品が欠けたり曲がったりしてしまいました。極めつけは、左右のテーブルの脚を接合する金属部品はまったく長さが異なり、これを使うと左右のテーブルの間に 20 センチくらいの間隔が開いてしまうことでした。「どうしたらこんな製品が作れるのか」逆に教えてもらいたいような気持ちになりました。
返品しようかとも思いましたが、1万円のためにまた 184 本のネジを外し、部品をパッケージに戻し、二人掛かりで車の屋根に載せて店まで戻るのも腹立たしく、返品することは止めました。
結局、金属の脚は使い物にならなかったので、自分で木材を使って脚をつくり、その上に卓球台(テーブル)を置くようにしました。これで今はなんとか遊べるようになりました。
恐らく、この中国の会社は今は存在しないのではないかと思います。サンプルだけ良いものを作って販売店に売り込み、契約をもらい、安価な大量生産を行い(サンプルとは違うものを)、大量に販売店に納品し、現金収入を得、あとは夜逃げする。そんな会社だったのではないかと思います。トラブルを抱えた販売店は大変だったことでしょう。
こういう会社にはリーンシックスシグマは必要ありません。リーンシックスシグマは、顧客との永続的な信頼関係を築くために、高い品質やサービスによって顧客満足を達成しようとする会社にこそ必要なものです。
きっと IKEA はリーンシックスシグマを使っているのではないかと思い、試しに”IKEA Lean Six Sigma”というキーワードで検索してみました。するとやはりヒットしました。例えば、”Improving Customers Service at IKEA Using Six Sigma Methodology” という論文では、典型的な DMAIC 手法を用いて顧客からのクレームを 333 件から 43 件までに減らしたということが書いてあります。この論文には簡単ですが、DMAICフレームワークで使ったツール類も書いてあります。例えば、VOC、SIPOC、Kano モデル、5-Whys、Fishbone 図、統計的データ解析など。
顧客満足を高められると思えば、リーンシックスシグマは決して難しいものではありません。日本には顧客満足を第一に考える会社がたくさんあります。そういう会社にこそぜひリーンシックスシグマを使ってもらい、成功してもらいたいと思っています。