リーンを勉強しようと思うと、やはりその大元であるトヨタに行き着いてしまいます。アマゾンなどでリーンの本を探してみても、トヨタについて書かれた本がたくさん見つかります。僕もリーンを勉強するために、トヨタについて書かれた本を何冊も読みました。この本はその中の一冊で、トヨタのリーダーシップ(リーン・リーダーシップ)について書かれた本です。
本の概要(裏表紙から)
The Toyota Way to Lean Leadership / Achieving and sustaining excellence through leadership development
- By Jeffrey Liker and Gary Convis in 2012
- ISBN: 978-0-07-178078-0
- MHID: 07-178078-5
トヨタ流の成功へと導く、あまり知られていない方法、それがリーン・リーダーシップ
リーン生産方式は、現代における多くの偉大なビジネスでの成功の要因となっている。しかしどうしてリーンを生産方式だけに留め、企業全体に広めないのだろうか。
リーンには、特に秘密ではないのだが、リーン・リーダーシップというものがある。好評を博しているトヨタ流に関する本の一環として、 Jeffrey Liker 氏と Gary Convis 氏が、従業員たちがどのようにして、リーン・リーダーシップに至ったのかについて説明する。
読者はこの本を読んで、真の素晴らしい経営に至るまでの軌道に載ることができるでしょう。そして慣性を持ちながら軌道を保ち、長期的な競争を勝ち続けていくことでしょう。〔ママ〕
あくまで個人的な書評
この本は、トヨタの企業文化や組織の考え方をとても上手にまとめています。文化や概念といった形の無いものを、多くの例を用いながら、実に上手に伝えています。外国人が読めば、トヨタの異例とも言えるユニークさに、感嘆するかもしれません。
僕は日本人であり、伝統的な日本の企業でも働いていたこともあります。トヨタとも取引があったので、トヨタのことも少しは知っているつもりです。その僕から見ると、この本の内容はちょっと誇張されてような気がしますし、また良い面だけを見ているような感じもあります。もっとも、本として売れなければならないので、一般的な読者(アメリカ人?)の興味を掻き立てるように書かなければならない、ということは分かっているのですが。
この本を読んで日本人として感じたことは、トヨタは日本文化の良い面を実に良く活用し、一方で悪い面を実に良くコントロールしている、ということです。またそれをアメリカの工場で、言葉も文化も違うアメリカ人の従業員に対しても適応しているというところは、素晴らしいとしか言いようがありません。
トヨタと、トヨタ以外の会社のリーダーシップを対比することで、トヨタの素晴らしさを際立たせています。ただ読み物としては大変面白いのですが、トヨタ流のリーダーシップを実際の職場(トヨタ以外)で活用できるかというと、甚だ疑問です。
もしトヨタ流のリーダーシップをトヨタ以外の会社が導入するのであれば、この本はまず、その会社の CEO が読み、自ら率先して実行しなければならないでしょう。例えば僕のような一般社員が実行しようとしても 100% 無理ですし、無意味です。なぜなら人事や教育、組織、査定など、すべてが変わって初めてトヨタ流リーダーシップが作られるからです。そこまでしてトヨタ流のリーダーシップを導入しようとする(または導入できる)企業があるでしょうか。
読み物のしては面白い本ですが、一般社員にとっては実際的ではない、それがこの本を読んでの僕の率直な感想です。
話が飛ぶようですが、LinkedIn のリーンやリーンシックスシグマ関連のグループには、リーダーシップに関する記事が山のようにあります。それこそ毎日、何十個もリーダーシップに関する記事が投稿がされます。どうやらコンサルタントの数だけ、リーダーシップ論があるようです。正直に言って、どうしてそんな数の異なったリーダーシップ論があるのか理解に苦しむので、僕は LinkedIn の中のリーダーシップに関する記事は読み飛ばしています。
それに比べて、トヨタのリーダーシップは長い歴史の中で培われたものであり、筋が一本通っています。LinkedIn の中の思いつきのリーダーシップ論に比べて、重みと厚みを感じます。唯一の、そして最大の問題は、トヨタ以外では、トヨタ流のリーダーシップを取ることが非常に難しいということ、かもしれません。