会社の同僚から薦められた統計に関する本です。統計の本といっても、統計に必要な数式やグラフは一切でてきません。話を補足する程度の数字と簡単なグラフが少し出てくる程度です。この本は、数字にまつわる幾つかの興味深い話をまとめたもので、殆どが文章です。数式を考えずに統計の話を読んで楽しむには、面白い本かもしれません。
本の概要(裏表紙から)
Numbers Rule Your World / The hidden influence of probability and statistics on everything you do
- By Kaiser Fung in 2010
- ISBN 978-0-07-162653-8
- MHID 0-07-162653-0
あなたが宝くじで勝つ確率はどのくらいか、なぜあなたの保険金額は高いのか、統計がどのようにインフルエンザの蔓延を防いでいるのか、どのようにドーピングする競技者をテストするのか、
この本は、毎日の生活のあらゆる側面に影響を与えている隠れた事実と事象を、統計学者でありブロガーのカイザー・ファン氏が解説します。
統計学は、あなたの生活、仕事、通勤、休暇、食事、お金、そしてあなたの成功を支配しています。統計学はまた、エンジニアがあなたの生活の質を計算したり、会社があなたの要望を考察したり、政治家があなたの意見を推測したりするのに使われています。
あなたが考えてもみなかった数字が、あなたのあらゆる生活の側面を支配しているのです。〔ママ〕
あくまで個人的な書評
読み物としては、とても面白い本です(もし統計の勉強をしたいのであれば、別の本をお奨めします)。日曜日の昼過ぎにソファーに腰かけ、すこしウトウトしながらリラックスして読む、そんな本です。他の統計やリーンシックスシグマ本と違い、厚さといい、大きさといい、手に負担を掛けることがないので、ソファーに寝っ転がっても読めます。
本の趣旨は、「より良い生活を送るためにも統計的な考え方を身に着け、統計に基づいた判断をしなさい」「マスコミの情報に踊らされないように」ということだと思います。
僕たちは日頃、いわゆる平均値を信じて判断し行動します。マスコミの情報も平均値が基本となっています。しかし統計学者に言わせれば、平均値はあまり意味がなく、むしろバラつきの方が重要です。なぜならバラつきにこそ本当の情報、本当の姿が隠れているからです。
統計的な考え方を身に着けるとは、平均値ではなく、バラつきに注目し、バラつきから対象を理解することです。この本は以下の例を用いながら、それを楽しく説明しています。
- 高速道路入口の信号規制と通勤時間
- ディズニーランドの FastPass とアトラクションの待ち時間
- ほうれん草のサラダパックと食中毒
- 標準テストと人種間の平等
- 異常気象と住宅保険金
- ドーピング検査と競技者
- 飛行機事故と新聞記事
などなど。
リーンシックスシグマも統計的手法を用いた問題解決のためのフレームワークなので、もちろん製品やサービスのバラつきなどに注目し、それを理解しようとします。その意味では、この本の趣旨とリーンシックスシグマは同じものだと思いました。
これら例題をただの例題として読むのでなく、リーンシックスシグマの応用範囲として読むと、結構参考になります。製造業が中心のリーンシックスシグマですが、交通、レジャー、食品、教育、気象、保険、スポーツ、報道など、ありとあらゆる分野でリーンシックスシグマが使えることが分かります。
僕は仕事で、グリーンベルトやブラックベルトのトレーニング・クラスでリーンシックスシグマの統計手法を教えることがあるのですが、いつもクラスの最初に、「学校で統計のクラスをとった人?」と聞くと、だいたい 8 割位の生徒が手を上げます。次に「統計を学校のプロジェクトで使った人?」と聞くと、手を上げるのは 1 割位になります。最後に「統計を仕事で使っている人?」と聞くと、残念ながら殆どいません。そんな時、この本から話を借りてきて、統計クラスの導入部にすることもあります、「統計って、結構面白いんだよ」というような感じで。
リーンシックスシグマの応用範囲を考える時や、統計の話題をクラスするとき、同僚がこの本を薦めてくれたことを感謝します。