試しに Amazon.com で「Six Sigma」をキーワードに本(新品、英語)を検索すると 1,441 冊も表示されました。一方 Amazon.co.jp で「シックスシグマ」をキーワードに本(新品)を検索すると 26 冊表示されましたが、内 9 冊は翻訳本なので、日本人の著者が記述した「シックスシグマ関連」の本となるとたった 17 冊だけでした。さらにシックスシグマ関連ではなく、シックスシグマについて書かれた本となると、4 冊ほどしか見つかりませんでした。この数字だけでも、日本語圏と英語圏でのリーンシックスシグマの扱われ方の違いが分かります。
そのような背景もあり、否応なしに、僕はリーンシックスシグマをすべて英語の本から学びました。しかし日本語のリーンシックスシグマの本も読んでみたい、そして日本のリーンシックスシグマの第一人者である眞木和俊氏の本を読んでみたい、と思い手に取ったのがこの 2冊でした。
本の概要(裏表紙から)
図解 コレならわかるシックスシグマ
- ダイヤモンド・シックスシグマ研究会 著(ダイヤモンド社 1999 年)
- ISBN: 4-478-37281-0
図解 リーンシックスシグマ
- 眞木和俊 著(ダイヤモンド社 2012 年)
- ISBN: 978-4-478-02126-2
(図解 コレならわかるシックスシグマ:裏表紙)
経営環境の激しい潮流を乗りきるための切り札として、経営手法「シックスシグマ」が国内で脚光を浴びつつあります。一方、外資系企業と合併することによって、突然シックスシグマと接する羽目になった方も少なくないことと思います。こんなとき真っ先に頭をよぎるのは、「もっと簡単な入門書があればいいのになぁ」という思いではないでしょうか。そんな皆様の思いに応えるべく、本書では、できるだけわかりやすいモデルを用いながら、段階的にシックスシグマを解説しています。シックスシグマ初心者から、導入を検討されている経営者の方までスムーズに理解していただけると期待しております。決してシックスシグマを難しく考える必要はありません。それでは限りなく広がるシックスシグマの世界に、皆様をご案内することにいたしましょう。
(図解 リーンシックスシグマ:裏表紙)
リーンシックスシグマは、あらゆるビジネス領域で使われている問題解決ツールです。リーンシックスシグマは、仕事や製品の質を高めていく「シックスシグマ」と、ムダを省いてプロセスを効率化する「リーン」のいいとこ取りを狙った最強の問題解決ツールです。いまや改善活動を得意とする製造業だけでなく、サービス業でも、病院でも、公共自治体でも、世界中のありとあらゆる業種や職場で使われています。
あくまで個人的な書評
著者であり日本のリーンシックスシグマの第一人者である眞木氏が記したこれらの本が、日本にリーンシックスシグマを広めることに大きな貢献をしたことは確かだと思います。
両書とも同じ形式で、5 章(入門編、初級編、中級編、上級編、質問箱)に渡り、リーンシックスシグマ(またはシックスシグマ)についてとても簡単にまとめられています。また両書とも 160 ページ前後、左ページが文章で右ページが絵という構成なので、実質読むところは 80 ページほど。内容はお話風または会話風なので、短い時間で気軽に読むことができました。
裏表紙の説明にもあるように、リーンシックスシグマの初心者や経営者のための「簡単な入門書」「シックスシグマの世界への案内」という目的は十分達成されています。違う言い方をすれば、「読者ターゲットを限定し、その限定した読者ターゲットのために内容も極力絞った」のがこれらの本である、という印象を受けました。
他のリーンシックスシグマ本(英語)では序章などに「リーンシックスシグマ概要」などが書かれていますが、今回読んだ本はまさにその箇所に該当すると思いました。
他のリーンシックスシグマ本(英語)ではそのあと第一章、第二章と続き、リーンシックスシグマについて深く掘り下げていきますが、今回読んだ本はそのような目的で書かれた本ではないので、深く掘り下げることはありませんでした。もし読者が実際にリーンシックスシグマを業務に応用しようと思われたら、次の段階として専門書まはた専門家に当たる必要があるかもしれません。
本の内容とは関係ありませんが、これらの本が発行された年を見て、日本のリーンシックスシグマの現状について今更ながら考えてしまいました。
「図解 コレならわかるシックスシグマ」が発行されたのが 1999 年、そして「図解 リーンシックスシグマ」が発行されたのが 2012 年です。以来、現在までこの 20 年近くの間にリーンシックスシグマは世界に広がり、また内容もどんどん発展しましたが、日本では全くと言って良いほど広がりも発展も感じることができません。
もし日本で少しでもリーンシックスシグマが普及していたなら、もっと日本人による日本語ののリーンシックスシグマ本が出版されていたであろうし、また著者の眞木氏も本格的な専門書を出していたのではないかと思います。
これは勝手な想像ですが、最初のシックスシグマ入門書を出版した 13 年後に、さらに同じようなリーンシックスシグマ案内書を出さざるを得なかった日本のリーンシックスシグマの現状に対し、著者の眞木氏は大いに嘆いているのではないかと思いました(僕は嘆いています)。日本のリーンシックスシグマの現状を見て、13年後に同じ編集者が「眞木先生、またリーンシックスシグマの案内書をもっとやさしく書いてもらえませんか?」と尋ね、眞木氏が「13 年も経ったのにまた同じレベルで書くの?勘弁してよ」などという会話があったのではないかと想像してしまいます。
本のなかで、「シックスシグマは日本生まれ、米国育ち」という表現が使われていますが、僕はそうは考えていません。なぜなら日本の品質管理の基礎はエドワード・デミング博士から学んだものだからです。やはりシックスシグマは米国生まれだと思っています(リーンは日本生まれといってよいかなぁとは思いますが)。何が言いたいのかと言うと、昔の日本ではたとえ海外のものであっても、良いものは学び、それを積極的に取り入れていく姿勢があったと思うのです。今はどうでしょうか。海外のもの、英語のものに対して極端に抵抗しているような感じがします。
これまた勝手な想像ですが、著者の眞木氏も同じように考えていたのではないでしょうか。「米国生まれ」と書くと日本の読者に敬遠させることを察して、「シックスシグマは日本生まれ」「リーンは日本生まれ」と書くことで、読書を安心させる狙いがあったのではないかと思うのです。
エドワード・デミング博士の名前を挙げたので、僕の好きな博士の格言のを一つ。
管理職にはびこる共通の病気は「我々の問題は違うんだ」と考えることだ。もちろん違うだろう。しかし製品やサービスの品質を高めるための原理や法則は世界共通である。
リーンシックスシグマには製品やサービスの品質を高める原理や法則が詰まっています。その原理や法則を知るためにも、リーンシックスシグマを今から始めてみても決して遅くはないでしょう。