エッセイ: 東欧ポーランドでの DFSS クラス

東欧ポーランドで DFSS(Design for Six Sigma)を教えてきました(グリーンベルトのトレーニング)。初めてのポーランドだったので、行く前から楽しみで何だかそわそわしていましたが、いざトレーニングが終わってみると「ポーランドって未来を感じる良い国だな」とつくづく感じました。

今回の DFSS クラスでは 14 人の生徒(エンジニア達)が参加しました。これまで何度も DFSS のクラスを持ちましたが、生徒の態度は今までの中で一番良かったのではないかと思います。20 ~ 30 歳代の若いエンジニア達は新しい知識を得ようと、居眠りをすることもなく、最初から最後までクラスに集中していました。良い質問も多く挙がって、とても充実したクラスとなりました。

僕が訪れたところは Katowice(カトビッツェ)というポーランドの南に位置する街です。その昔まだ共産主義の頃は炭鉱で栄え、炭鉱が閉鎖されてからは工業を中心とした街に生まれ変わったそうです。高等教育(学士、修士、博士など)を受けた豊富な人材が格安の人件費で雇えるとあって、海外の企業が今どんどんとこの街に進出してきているそうです。実際に街を歩いてみても、IBM や EY 、ABB など外国企業の建物が目に付きました。

Katowice Poland

それ以外にも街を歩いていて気付いたことは、とにかく若い人たちが多いことです。時間帯によるのかもしれませんが、朝や夕方、夜などはほとんど熟年者を見かけませんでした。電車に乗ったときなど、(年寄りと相場が決まっている)車掌が女の子だったり男の子だったりして「リアルな電車ごっこだな」と思ったりしたほどでした。

僕のほんの限られた観測範囲の中では、若い人たちは英語も話せ、新しい文化、知識や技術の吸収に貪欲でした。今まさに発展しながら伸びている社会というものをポーランドに感じました。

生徒さんの構成は、14人中13人が機械系のエンジニアで、一人だけが制御系の組込みファームウェアのエンジニアでした。機械系のエンジニアが殆どだったので、クラスで使う例題を機械設計のもの(スタックアップ・モデル:累積公差分析を使ったモンテカルロ・シミュレーションなど)に入れ替えてトレーニングに臨みました。ファームウェアのエンジニアには少し申し訳なかったので、個別に例題を用意してフォローしました。

クラスの最初の数モジュールでは、生徒さんたちは質問することもなくとても静かでした。少し気になったので、休み時間にポーランド人の気質について尋ねてみたところ、「授業は静かに聴くもので、質問などを繰り返し聞くのは先生に失礼に当たる」と教えてくれました。「まるで日本人のようだな」と思いながら、「僕が喋っている間でも構わないから、質問や気付いたことがあれば、どんどん口に出して言ってくれた方が僕としても嬉しいし、同じ質問をみんなで共有することができれば、皆のためにもなるだろう」と説明したところ、それ以降はこれまた日本人のような律儀さでたくさん質問してくれるようになりました。案外ポーランド人と日本人は気が合うのではないかと微笑ましく思ったりもしました。

ポーランド人は講師の僕に気を使ってくれるせいか、内容を理解していなかったり、話がつまらなくても、それをあまり表情に出そうとはしないように見えました。それ故に「本当に分かっているの?」と逆に心配になることも度々ありました。

これがアメリカ人だったら「俺が理解できないのはお前のせいだ」みたいな態度に出るし、あくびを殺すどころか机にうっぷして寝たり、スマートフォンで遊びだしたりします。クラスのフィードバックがリアルタイムで返ってくるところがアメリカ人の良いところですし、それによって僕も鍛えられましたので、あまり悪くは言えないのですが。

そうそう、今回はクラス中にスマートフォンをこっそり使い出す生徒はだれ一人いませんでした。本当にポーランド人は良い人ばかりでした。

どのくらいポーランドが気に入ったかというと、ホテルに戻ってからポーランドの移民政策を調べたほどです。「引退後はポーランドでのんびりとリーンシックスシグマのコンサルタントでもやるか」と思ったりしたのですが、それほど移民手続は簡単ではないようでした。それでも Linkedin でリーンシックスシグマ関連の仕事を検索してみると、外国企業が多く入っているせいか、結構な量の求人がありました。引退後のポーランド移住計画に少し明かりが差しました。

ポーランドと比較すれば、日本は豊かで発展した国です。しかし日本はどんどん歳をとって、すべてにおいて内向きになって萎んでいるように見受けられます。一方ポーランドは貧しいながらも若くて成長しています。その勢いを肌で感じることができ、忘れていたものを思い出すことができたことが、今回のポーランド出張の一番の収穫だったような気がしています。