エッセイ: 科学的方法

ウィキペディアで「科学的方法」を調べてみると、以下のように定義されています。

科学的方法(かがくてきほうほう、英語:scientific method)とは、物事を調査し、結果を整理し、新たな知見を導き出し、知見の正しさを立証するまでの手続きであり、かつそれがある一定の基準を満たしているもののことである。科学的手法、科学的検証ともいわれる。

この

  • 知見の正しさを立証するまでの手続きであり
  • かつそれがある一定の基準を満たしているもののことである

という下りを読みと、つくづくリーンシックスシグマは「科学的方法」であると感じます。リーンシックスシグマにおける「手続き」とは、DMAIC や DMADV などのフレームワークや、ツール・チェーン(ツール類の連携)を指し、また「一定の基準」とはツール類を正しく使うことができる知識と経験だと思うからです。

科学的方法とリーンシックスシグマ

しかし実務において、科学的方法に基づいて知見の正しさを立証するための手続きを取ることは、なかなか難しいものです。仮に正しい手続きを取ったとしても、そこから導き出された結論を、そのまま受け入れるとは限りません。その原因は恐らく、結論がもたらす新たなコスト増や時間的リスク、技術的リスクなどを受け入れることができないという、我々が持つ心理的な抵抗であり、結論の正当性ではないような気がします。

リーンシックスシグマの活動を通じて時々目にするあまり良くない例として、「結論がすでに固まっている場合」が挙げられます。この場合、リーンシックスシグマの活動はすべて結論を立証するために使われます。しかしツールがその結論に反する結果をもたらす場合もあり、その時は望む結果が導かれるように、後からツールやデータを操作(改ざん)することが行われる場合もあります。

この良くない例は、特に意思決定ツール(Pugh Matrix、 AHP、 Concept FMEA など)を用いた場合に多く、また、コストや時間に追われているマネージャ達に多く見られます。恐らくマネージャの心の中では短期的にコストや時間を削減するための方法はすでに決まっており、リーンシックスシグマは単に資料作成道具として使われているのかもしれません。

科学的方法、またはリーンシックスシグマの手法を用いる時に大切なことは、科学的な手続きによって導き出された結果をそのまま受け入れる姿勢だと思います。結果を受け入れるためには、信頼性の高い手続きが必要です。そのためにリーンシックスシグマでは、正しいツールの使い方を訓練します。

僕はグリーンベルトやブラックベルトの講習で、リーンシックスシグマは科学的な方法だと説明することがあります。その理由は、リーンシックスシグマを用いて、今まで行ってきた恣意的な仕事のやり方から、科学的な仕事のやり方へと、変わってもらいたいと願うからです。