解説: リーンシックスシグマによる生産性の高め方

OECD加盟36カ国中21位だとか、製造業は良いがサービス業は駄目だとか、 日本の生産性について様々な議論があるようです。生産性の定義も色々とあるようですが、では一体リーンシックスシグマは生産性をどのように定義しているのでしょうか。今回はリーンシックスシグマと生産性の関係について説明してみたいと思います。

リーンシックスシグマの究極の目的は企業の成長と利益の増大です。そのためリーンシックスシグマの生産性の定義はとてもシンプルです。

生産性 = Productivity = ROI
= (収入 – コスト) / コスト
= 利益 / コスト

リーンシックスシグマを使って生産性を高めるためには、収入(売上)を増やすか、またはコストを削減するか、そのどちらか(または両方)だけです。

リーンシックスシグマ企業の生産性の高め方

リーンシックスシグマを採用する企業は、生産性改善目標を毎年設定します。例えば「今年度のコスト削減目標は25億円」といった具合です。

(Note: 売上の目標は営業やマーケティング、製品開発に関わるだけではなく、市場状況にも影響されるので、ここでは取り上げません)

それ受けて、リーンシックスシグマに携わるブラックベルトやグリーンベルト達は、コスト削減目標を達成するためのアイデアを自ら絞り出したり、アイデアを社内から集めたりします。

ブラックベルトやグリーンベルト達がコスト削減アイデアを広く社内から集めるときは、部署ごとでミーティングを開きます(実際は定期的に行っている)。例えば、

  • ファクトリー生産性会議
  • 製品開発部生産性会議
  • プロジェクトマネジメント生産性会議
  • グローバリゼーション生産性会議

といった具合です。ミーティングで集められた様々なコスト削減アイデアの中には良いものもあればそうではないものもあります。しかしすべてのアイデアは一旦一箇所に集められ分類と評価を待ちます。

コスト削減アイデアの分類

集められたコスト削減アイデアはどのくらいのコスト削減効果があるのかが、一つずつ評価されます。その際に使われるるのが、以下のようなフローチャートです。

コスト削減案の分類フロー

コスト削減アイデアは、ハード削減とソフト削減の二つに大きく分かれます。ハード削減は、今年度の企業の財務諸表(貸借対照表や損益計算書)に反映されるようなコスト削減です。一方ソフト削減は今年度の財務諸表には反映されませんが、将来的に企業の経営・運営効率を高めるコスト削減です。財務・経理部門はもちろんハード削減を好みますが、企業を筋肉質に変えるためにはソフト削減がとても重要です。

コスト削減アイデアの評価

コスト削減アイデアは分類と同時に、削減効果を金額で評価します。一つのアイデアが色々なコスト削減効果をもたらすこともあるので、以下のような表を使います。各項目の合計金値が、そのアイデアのコスト削減効果になります。

コスト削減案の分類表

人件費

  • 業務改善による人件費の削減
  • 残業時間低減による人件費の削減
  • シフトの変更等による人件費の削減
  • やり直し作業削減による人件費の削減

材料費等

  • 使用品の削減(工具やオフィス用具など)
  • 原材料の削減
  • 在庫の削減
  • 在庫保存期間の延長
  • 購入リードタイムの改善
  • 購入金額の削減
  • 在庫回転率の向上
  • 在庫費用の削減

生産能力等

  • 機械使用効率の向上
  • セットアップ時間の削減

管理費等

  • 旅費・出張費等の削減
  • フロアースペースの削減
  • 建物等の効率的な利用
  • 電気・水道代等の削減
  • その他管理費用の削減

その他のコスト削減

  • 補償費等の削減
  • 計画されていた予算の削減

経営戦略

  • 顧客満足の向上
  • 顧客クレームの削減

売上の向上

  • 生産能力の向上
  • ボトルネックの解消
  • 新製品の開発

リーンシックスシグマのプロジェクト

分類とコスト削減額の評価が終われば、あとは効果の高い(コスト削減額が高く、リスクが少ない)ものから順にリーンシックスシグマのプロジェクトを実行してきます。

このようにリーンシックスシグマのプロジェクトを継続して行うことで、企業の生産性が年々高まっていきます。