前回の投稿では、顧客が知覚する価値を把握するためにジョブ・マッピングや消費チェーンというツールを使うこと、そしてぞれぞれの仕事(ジョブ)に対して顧客が期待する結果をすべて洗い出すこと、さらにそれらの重要度や満足度を知るためにサーベイ(アンケート)を実施することなどを記しました。今回はそのサーベイ結果を使って機会分析やギャップ分析を行うことや、顧客満足度を高めるためのアクションに優先順位をつけることなどを説明します。
ここでは前回の投稿で説明したサーベイ(アンケート)を用いて、それぞれの 仕事(ジョブ) や期待する結果に対する重要度や満足度(自社と他社)を5段階で100人の顧客に評価してもらったと仮定します。
まずは100件のデータを用いて、質問ごとに、そして5段階の評価ごとに、それぞれ合計値を計算します。下の例では、質問5の重要度は
- 全く重要ではない = 回答数 9
- それほど重要ではない = 回答数 18
- 重要である = 回答数 25
- とても重要 = 回答数 32
- かなり重要 = 回答数 16
となっています。
重要度(総合評価値)の計算
次はそれぞれの質問ごとに重要度(総合評価値)を以下の式を使って計算します。
重要度(総合評価値)= (とても重要とかなり重要の合計値) / (質問回答数の合計値)* 10
下の例では、質問5の重要度(総合評価値)は
4.8 = (32+16) / (9 + 18 + 25 + 32 + 16) * 10
となります。
重要度(総合評価値)はすべて0から10の範囲に収まります。
満足度の計算
同様に、それぞれの質問ごとに満足度(総合評価値)も以下の式を使って計算します。
満足度(総合評価値)= (とても満足とかなり満足の合計値) / (質問回答数の合計値)* 10
下の例では、質問5の満足度(総合評価値)は
3.8 = (30+8) / (3 + 20 + 39 + 30 + 8) * 10
となります。
満足度(総合評価値)も重要度と同様にすべて0から10の範囲に収まります。
機会チャート
すべての質問(ジョブと期待する結果)について重要度と満足度の総合評価値を計算したら、その結果を機会チャート上に点として描きます( X軸は重要度、Y軸は満足度 )。
提供過多のケース
機会チャート上に描かれた点が左上にあれば、その点は「顧客にとってその仕事(ジョブ)はそれほど重要ではないが、その結果(提供される機能やサービス)には十分満足している」ということを表しています。
自社が提供する製品の機能やサービスに顧客が十分満足してくれていること自体はとても良いことなのですが、それほど重要ではない機能やサービスに自社の資源(人、モノ、カネ、時間)を割いているとしたら、それは問題です。なぜなら多くの場合資源は限られており、その限られた資源は顧客満足度をさらに高めるために、より重要な仕事(ジョブ)とより高い品質の機能やサービスに使われるべきだからです。
機会チャート上の左上の点は提供する機能やサービスが過剰な状態を表しているので、優先順位を下げて、自社の資源分配を考慮しながら、その機能やサービスの縮小や停止などを検討する必要があるかもしれません。
提供不足のケース
機会チャート上に描かれた点が右下にあれば、その点は「顧客にとってその仕事(ジョブ)はとても重要だが、その結果(提供される機能やサービス)には満足していない」ということを表しています。
つまり顧客はその仕事(ジョブ)を達成することがとても重要と感じているにも関わらず、自社が提供する製品やサービスはその要望に十分応えていないということになるので、そのような機能やサービスにはもっと高い優先順位をつけて速やかに改善するべきです。
改善する機会(チャンス)の大きさは点の位置が右下になればなるほど大きくなります。
適切な提供のケース
機会チャート上に描かれた点が中央にあれば、その点は「顧客にとってその仕事(ジョブ)は重要であり、その結果(提供される機能やサービス)にはまあま満足している」ということを表しています。
顧客満足を維持し、かつ限られた自社の資源(人、モノ、カネ、時間)を適切に配分していると言えるでしょう。
もし点の位置が右上の方にあれば、その提供する機能やサービスの品質を確実に維持する必要があります。
限定的な機会
機会チャート上に描かれた点が右上にあれば、その点は「顧客にとってその仕事(ジョブ)はかなり重要であり、しかも結果(提供される機能やサービス)にはかなり満足している」ということを表しています。
とても良い状態ですが、さらなる改善の機会が限定的なので、現状を確実に維持する必要があります。
混合したケース
機会チャート上に描かれた点が広く分布してしまった場合は、優先順位をつけて提供する機能やサービスを改善します。
つまり右下(重要度は高いが、顧客は満足していない)に分布する機能やサービスの改善を優先的に行い、左上(重要度は低いが、すでに顧客は満足している)に分布する機能やサービスの改善は後回しにします。もちろん自社の資源(人、モノ、カネ、時間)が十分にあれば、すべての改善を行うこともできます。
満足度による優先順位付け(満足度ギャップ分析)
重要度から満足度を引くことで、満足度ギャップを計算することができます。但し重要度よりも満足度が高い場合は満足度ギャップをゼロとします。
満足度ギャップが大きければ大きいほど、顧客はその機能やサービスに満足していないことを表します。
改善の機会による優先順位付け(機会ギャップ分析)
重要度に満足度ギャップを加えることで、改善の機会の大きさ(ギャップ)が分かります。改善の機会ギャップが大きい機能やサービスを優先的に改善していけば、限られた自社の資源(人、モノ、カネ、時間)使って、最大限の顧客満足の向上が図れます。
他社の満足度の評価
これまで自社が提供する機能やサービスについて、その重要度や満足度を評価してきましたが、同様に他社の満足度も評価することで、自社と他社が提供する機能やサービスの対比ができるようになります。
顧客の立場から自社が他社より優れている点は何か、または劣っている点は何かということが分かれば、具体的なアクションを起こすことができます。
次回からは市場での自社の評価について説明していきたいと思います。