毎年10月と11月はリーンシックスシグマの認定プロジェクト(グリーンベルトやブラックベルト)がたくさん立ち上がる時期なので、今年も大変忙しく過ごしました。というのも、今働いている会社は10月が年度初めなので、従業員達が新年度の目標に、リーンシックスシグマの認定を挙げることが多いからです。今年もこの二ヶ月で、7つのグリーンベルト・プロジェクト、4つのブラックベルト・プロジェクトの指導を担当することになりました。今はプロジェクトのセットアップも一通り終わり、ようやく一息つけるようになりました。
僕はプロジェクトを立ち上げる時、次の三つを行います。
- 管理職とプロジェクト担当者とのインタビュー
- プロジェクト・マップ(Thought-Mapと呼んでいます)の作成
- プロジェクトフォルダ(SharePointを使用)の作成
1.管理職とプロジェクト担当者とのインタビュー
現在抱えている問題点を洗い出し、内容を理解します。そして問題を解決するための最適な手法を選びます。
リーンシックスシグマは(1)シックスシグマ(DMAIC)、(2)リーン、そして(3)DFSS (Design for Six Sigma)の集合体なので、3つの手法のうち、どれを使うか検討し決定します。3つの手法があるので、僕はゲームの始めのジャンケンのようなものだと思っています。
2.プロジェクト・マップ(Thought-Map)の作成
リーンシックスシグマのプロジェクトの中で、もっとも重要な工程です。問題を解決するためのシナリオを設計します。例えば、
- ビジネス・インパクトの把握する(QFD)
- プロジェクトの範囲を確認する(プロジェクト・チャーター、SIPOC)
- 利害関係者を把握する(RASCIマトリックス)
- 利害関係者の要求を理解する(VOC、KJ、QFD)
- 要求項目の優先順位を決定する(AHP)
- 要求仕様を詳細仕様に分解する(QFD)
- 問題解決のためのコンセプトを選ぶ(Pughマトリックス、Concept FMEA)
- 現在のプロセスや設計を分析する(Capability Analysis、Statistical Analysis)
- 新しいプロセスや設計を行う
- 新しいプロセスや設計のリスクを分析する(Process FMEA、Design FMEA)
- 新しいプロセスや設計を数値化する(DOE、回帰分析)
- 新しいプロセスや設計のバラツキや確立を分析する(Monte Carlo シミュレーション)
- 新しいプロセスや設計が問題を解決することを確認する(Capability Analysis、Statistical Analysis)
- 新しいプロセスや設計を実施し、データを取得し、計画通りであることを確認する(Statistical Analysis)
というようなシナリオをプロジェクト毎に、問題内容に応じて組み立てます。ちなみにカッコ内は使用するツール類です。リーンシックスシグマの認定を受けようとする候補者にとっては難しい作業なので、これは僕が作ることにしています。
プロジェクトの全体像とストーリーが見えると、候補者は安心して自らプロジェクトを遂行できるようになります。そのようなこともあり、この作業は欠かせません。
3.プロジェクトフォルダ(SharePoint)の作成
候補者共通の質問は、いつも決まって「サンプル、例題、テンプレートはないのか」というものです。そのため、プロジェクトごとに共有フォルダを作り、サンプル、例題、テンプレートを候補者同士で共有できる環境を作っています。
では一体何故、このようなことを行うのか
一言で言えば、リーンシックスシグマは「バラツキを減らし、失敗の確率を減らす(成功の確立を高める)」手法です。バラツキや確率は、なにも製品やプロセスに限ったものではありません。プロジェクトの成功にもバラツキと確率があります。資料によると、プロジェクトの成功確率は 50% 程度だそうです(コストと納期において)。このプロジェクトの成功確率を高め、成功のバラツキを減らすためにリーンシックスシグマは大変効果的で有効であるため、このようなことを行うようにしています。