エッセイ: FMEA自身の故障モード(1)

リーンシックスシグマにおいて、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)ほど良く使われるツールは、他にはあまりないかもしれません。

リーンシックスシグマのプロジェクトとDFSSのプロジェクトを合わせて、僕は4種類のFEMAを使っています。コンセプトFMEA、設計(デザイン)FMEA,工程(プロセス)FMEA,テストFMEAの4種類です。またシステムレベルから詳細レベルまで、階層ごとにFMEAを実施することもあるので、一つのプロジェクトの中に、いくつもの種類のFMEAが階層ごとに存在することになります。FMEAが良く使われる理由は何と言っても、プロジェクトにおけるリスクが顕在化する前に、何らかの対策を施すことができるためです。 FMEAはリスク管理ツールなので、その意味においては、リーンシックスシグマにおけるリスク管理が占める割合は、かなり大きいと言えるでしょう。

ただ、FMEAを使った実際の業務では幾つか問題点もあります。その最たるものが、フォローアップが無いことです。FMEAを実施し、リスク対策案を洗い出したところまでは良いのですが、その後リスク対策を定期的に見直すこともなく、またエクセルで作ったFMEAファイルは更新されることも無く、結果としてリスク対策が実際に施されたのかどうか分からない状態になっていることがよくあります。

FMEAは思いのほか高価です。例えば10人のメンバーが4時間かけてFMEAを作ったとしたら、約40万円(1万円 X 10人 X 4時間)です。

対策あってのFMEAなのですが、これでは何のために時間とお金を割いてFMEAを実施したのか分かりません。フォローアップ無きFMEAは、FMEA自身の典型的な故障モード( failure mode )と言っても良いでしょう。

FMEA自身の故障モード

フォローアップ無きFMEAへの対策として、僕は、FMEAで洗い出したリスク対策案を、項目ごとにまとめるようにしています。種類ごと、階層ごとに作られたFMEAを見ると、同じようなリスク対策案が重複している場合がよくあります。これらをまとめることによって、全体のリスク対策案の件数を、管理可能な数まで減らすことができると同時に、一つの対策を施すことで複数のリスクに対処できるようになります。リスク対策案だけをまとめた新たな表を作ることになりますが、この表はプロジェクト管理でも使えるため、無駄にはなりません。

よくプロジェクト管理では、リスク管理表( Risk Register )を作ります。そのリスク管理表に、FMEAから抽出したリスク対策案を組み込むことで、プロジェクトのリスクとFMEAのリスクを同時に管理することできます。後はプロジェクトの進行に合わせて対策案を一つずつ実施していけば、多くのリスクを未然に防ぐことができます。

FMEA語のPCDA